広尾学園中学校高等学校
帰国生には最高の環境と条件
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国際担当 小山 和智
2007年4月、新生「広尾学園」がスタートしました。 |
● 広尾学園の個別学習サポート体制
前号でもご紹介しましたとおり、広尾学園は2008年度の入学志願者数が前年比 482%増という全国で例を見ないほどの驚異的な伸びを示しました。これは、コーチングの手法で育む「自律と共生」の教育に取り組んでいる広尾学園の姿勢に対し、皆様から熱いご支持をいただいた結果だと私たちは受け止めています。
広尾学園の在校生や保護者の“満足度”を支えているのは、もちろん充実した授業内容なのですが、そのほかに、生徒の個別学習を支援していく「P.L.T.プログラム」「定期試験の解答・解説集/解説授業」「土曜特別講座」そして「土曜特講の夏期集中講座」などがあります。
「P.L.T.(Personalized Learning Test)」は、既にこのコーナーでも紹介したことがありますね。学園の一日は、一人ひとりの学習進度に対応した「P.L.T..」で始まります。各生徒の答案は学習司令センターに運ばれ、放課後の「P.L.T. Follow-up」の時間までにテストの結果に基づいた個別課題が作成されます。この循環型学習を朝と放課後、毎日繰り返していくことで苦手を克服し、さらに上の学力を身につけることができるのです。
現在行っている「P.L.T.プログラム」では、英語か数学を選択して学習します。どちらか苦手なほうの一科目を選んで基礎から学べますし、だんだんと力がついてきたら、学期ごとに科目を変えることが可能です。また、この学習で時間管理や集中力の訓練もできますので、他の教科にも好影響があります。
● 独自の刷り込み型学習システム
日常の授業内容の定着を図るのが定期考査ですから、広尾学園では定期考査を格段に重視しています。単なる一過性の試験に終わらせてしまったら、学力アップの貴重な機会を活かせません。
中間試験の範囲設定は、その学期の初めから中間試験までの学習内容が範囲、期末試験はその学期の初めから期末までの学習内容が範囲、そして学年末試験は1学期開始から1年間学んだ学習内容すべてが範囲となります。つまり、何度も繰り返して刷り込むことで、学習内容をきちんと定着させるようになっています。
授業と定期考査を最大限効果的なものにするため、広尾学園では各学期ごとに「解答・解説集」を生徒に配布します。その中には上級生の試験解説まで網羅されていますので、1年生から3年生の学習内容まで縦断的に見渡せます。単に答え合わせをして終わらせてしまうのではなく、関連事項や発展事項まで含めて、改めて学習できるように配慮されています。
期末試験の後には、解答・解説集を使って「解説授業」が行われます。それぞれの学期で行ってきた授業のエッセンスを生徒に伝え、さらに発展項目や入試問題への応用などにも言及します。この解答・解説集の内容をきちんと理解すれば、大学センター試験で高得点が取れるようになっています。
● インターナショナルコースの方向修整
「インターナショナルコース」は昨年4月から開設し、随時編入で対応しています。これまで、指導内容の中に国際バカロレア機構(IBO)の教育内容を大幅に取り入れて、海外留学にも資する形で構成してきました。広尾学園は現在のところIBOの候補校ですが、まだ認定校ではありません。
ところが、現在在籍している生徒約30名の保護者の大半は、日本の大学とアメリカの大学の両方に進学の途が開ける教育内容を要望されています。つまり、英語で学びながら文部科学省の高校卒業資格と「良質のバイリンガル教育」を得ることを第一として、高校2・3年の学習にアメリカ式のTOEFLやSAT、さらには「Advanced Placement(AP)」の指導を加えていってほしいという声が多くあります。
このような状況から、学園では方向修整を試みております。IBの良い点(とくにMYPの内容)をできるだけ残しつつ、日本の学習指導要領の枠組みとアメリカの大学進学に備えた指導内容とを融合していくこと、また、国語力の高い生徒には「特進コース」の現代国語の授業に参加できるようにするなど、新しい試みも始めました。
海外の大学受験だけでなく、高校段階で再び海外赴任となりそうなご家庭もあります。私たちは、35年前に“帰国子女受け入れ校第1号”に指定された時と同様、社会のニーズに応える責任を痛感しています。
英語補習校だより(14) 中学受験に役立たない? 最近、「帰国生の中学校入試に備える」という理由で、英語補習校をおやめになるケースが増えてきました。「入試はネイティブ教師の面接のみ」といった学校、さらには作文/小論文を英語で書かせる学校については、英語補習校に通っているメリットは充分にあるはずですが、そうした学校は限られているのも事実です。 また、広尾学園の国際生入試の受験資格に「帰国後18ヶ月以内」(つまり小学5年の6月以降の帰国であること)の条件が加わったことで、一般入試で受験しなければならなくなり、そのために塾に通い始める子供も少なくありません。 もちろん、帰国生といえども国語や算数の基礎学力は必要です。しかし、ネイティブ同然の英語の学力が受験勉強のために失われていくのは、余りにもったいないですし、既に英語でできあがっている知識構造までが浸食されていくことで、メンタルな面まで困難な状況に陥る子供も出てきます。 英語補習校は、日本語を学習言語として活用できるようになるまでの支援にも役立つものです。また、英語で思いきり話せる機会を与えることで、慣れない学校生活へのストレスを解消させ、また学習への自信・意欲を回復させることもできます。 http://www.toshima.ne.jp/~kyoiku/Eigo-Hoshuko-J.htm |
「INFOE」 2008年9・10月号(第22号)掲載